NanoVNAで水晶発振回路のチェック

NanoVNAで水晶発振回路のチェック

SWR計にしかNanoVNAを使わない皆様に、簡単なプローブをご紹介いたします。高周波数の測定は周波数が高くなるとリード線や周囲の環境で大きく変化します。今回は回路チェックとしても使えるプローブを製作いたしました。

基本はCh0の反射をVNAで測定する簡易的な方式です。組上げた実装回路の状態を確認するのには簡単にインピーダンスが読み取れ便利なグッズです。

NanoVNAはCAL機能があるので、精度の高い計測器と言えるでしょう。

今回製作のプローブと構成Unit

プラの角棒に3㎜ピッチに縫い針でプローブコンタクトを作ります
針先に注意してください 同軸と本体はヒシチューブで1.5D2Vのケーブルを保護します。

部品詳細

5㎜□×30㎜長さの角棒に2.54㎜ピッチで針が通る穴をあけ、ケーブルを接続させる切り込みを入れる

ピッチは1.5㎜と2.45㎜の2本製作。最近は1005以下の部品も多いので1.0㎜ピッチも…年寄りにはつらい寸法です。😢

針を適度の長さに切り揃え半田付けする

針の根元ではんだ付けでもOKです

NanoVNAはCALが命です

 測定する周波数、又は想定周波数でCALをとります。Open・Shortと50Ωの Loadを設定⇒Doneで校正
ICソケットを分解して丸Pin を流用(下Load・上Short)

ICソケットをプラニッパーで解体流用

CALが設定されたら

  1. NanoVNAのTrace設定を Trace0 と Trace1 を設定
  2. Trace0 をまたはTrace1をクリックしFormat選定するChの色が反転。2回押すとChが消える)
  3. Formatモードに切り替え反転したChをPhaseとSmithにする
これで設定OKです。周波数とSpanは初期CALで設定済み、測定開始!
水晶の両端たは発振回路のトランジスターのベースとエミッタ(入力端子)にプローブを接続して測定
受信ユニット304.3MHzの発振回路測定(白い四角は水晶発振子)

特性の分析

受信ユニット(局部発信の水晶発振回路)

位相が+(L誘導)中央から上に寄った場所が発振周波数です
304.31MHzが発振周波数。Smithチャートが下に寄っている、VCCIの対策で局部発振出力を抑え込んだ為に発振エリアが狭くなったようです。

発振ユニット(キーレスリモコンの発振回路)

受信ユニットと同じく水晶端子または発振回路の入力にコンタクトPinを接触測定

測定波形

315.004MHzで発信しています。安定してますね。

水晶の発振周波数をシフトした周波数変調(FSK)回路の周波数の測定

右のコイルがシフト用のコイルで100kHz程度下側にずらします
FSK信号とは数10KHz ~数100KHzシフトした搬送波を、データー化させΔf シフトさせた変調信号です0→シフト前の周波数 1→シフト後の周波数を 指定したクロックで周波数変調をかけます。
このほかにPSK方式(位相シフト)などもあり、データー通信の主流になっています。デジタルTVや携帯電話、最近はやりのデジタル方式の無線機、これらは360度の位相を4分割(90度)ずらして一度に4つの データー送り込む方法です。これに4段階の振幅変調(AM)を加え64階層のデーターを一挙に送り込む64QAMという驚異の方式で変調されています。デジタルTVやWiFi等はこの変調を多重拡散方式でデーター量を増し、占有周波数帯を少なくさせるOFDM(直交周波数分割多重方式)で高速伝送を行って言います。
アマチュア無線ではやっているFT8という方式はFSK変調の流れをくむ方式でGFSK方式と呼ばれてます。通信ボーレートは~20bpsという低速で、モールス信号の素早い信号にエラー補正を加えた通信方式です。
これだったら10W以下の無線機でもDX(海外交信)も可能ですね。宇宙開発の惑星探査通信に使われていたんでしょうね。

話が脱線してしまいました。ここでは追加したコイルがどれだけシフトしたかをNanoVNAで測定します

下側にシフトした発振周波数(315.0MHz→314.93MHz)

下側にシフトした周波数

コイルを追加した為に発振周波数のレンジが広がりました。70KHz程度 下側にシフトしていることがNanoVNAで判明できます。(実動値=NanoVNA測定値と同じです)

発振回路以外も使えるの?

今まで測定したのはSAWレゾネーターと言われる水晶発振子の回路測定でした。それではSAWフィルターの高周波アンプの増幅器を測定してみましょう。
  1. NanoVNAのTrace設定を Trace0 と Trace1 を設定
  2. Trace0 をまたはTrace1をクリックしFormat選定するChの色が反転。2回押すとChが消える)
  3. Formatモードに切り替え反転したChをLOGMAGとSmithにする

受信回路に使われるSAWフィルター315MHzで1MHz帯域幅のフィルターです

アンテナ入力に使われるSAWフィルター
外来の近隣周波数(314.5MHz~315.5MHz)以外の無線周波数の妨害を少なくさせるフィルターです。
水晶発振子が複数内蔵されていて、その間の周波数を通過するフィルターで、水晶のほかにセラミックフィルターやメカニカルフィルターなどがあります。SAWフィルターは表面弾性波フィルターと言われますが、いかつい名前なのでSAW(ソウ)フィルターと言う名前が定着しています。

SAWの特性

アンプの反射特性でフィルター特性を確認。

入力インピーダンスは50~75Ω程度バンドパスは1MHz
Ch1を使わなくても概ねの帯域幅が反射モードでも見えました。フィルター特性などは後日に治具製作してみてみたいと思います。

NanoVNA色々使えそう、まだまだ入り口です。これからもチクチク使ってみたいと思います。