NanoVNAでCL測定

NanoVNAでCL測定

コイルやコンデンサーの容量を測定し、同調回路を作るとなぜか計算値と違う結果が、という経験の方は沢山おられるとおもいます。

コイルとコンデンサーは使われる周波数で容量は変化します。結果、回路を作ってもCut&Tryの作業が続きなぜか納得いかない状況で結果オーライで終る。

NanoVNAで容量測定

コンデンサーとコイルの容量値は、一般的には周波数によるインピーダンスの変化が少ない低い周波数での値が、公称値となります。
LCRメーターやインピーダンスアナライザーなどでLCRは測定できますが、測定周波数は100KHz~5MHz程度です。当然、測定測定周波数で値は変化します。高周波用のインピーダンスアナライザーには1.9GHz迄測定できる4294Aなどという超重量級の測定器もあります。
廉価のテスターはLCRメータ―です、しかも抵抗も測れます。しかも交流ブリッジでの測定ですので低抵抗も測定が可能です。ただしバイアスのかかった電池の内部抵抗は測定不能です。
交流ブリッジ以外にもQメータ―やグリッドディップメータ―などがありましたが、技術の進歩でこの技術は廃れていきました。特にデップメーターは共振回路設計に役立つツールでした。TRIOのデップメーター DM-6は6CW4というニュービスタ管という真空管が使われていましたね。3極管で共振時にグリッド電流がディップするので「グリッドディップ メーター」の名前がついていました。商品名が名前の由来です安直なネーミングです。この商品のせいでTRIO(旧 春日無線工業)のコイルキットが市場から消えました。デップメーターがあれば、TRIOのコイルを買う必要がなくなり自分で自分の首を絞めたようです。トリオの他にも三田無線やリーダー社からもデップメーターが発売されていました。
Qメーターもディップメーターと同じように校正用のコイルが周波数に応じて数種類ありコイルのインダクタンスやQを測定した記憶があります。

趣旨はC・Lの測定でしたね

一般的なLCRメーター

秋月電子さんから廉価版の DE-5000 というLCRメーターが7000円で売っています。チッププローブもあり、結構使えそうです。
測定周波数が100kHz なので高周波の回路設計には非力感があります。

本格的なインピーダンスアナライザー

内部バイアスが5V印加できますので リチウムイオン電池の内部抵抗も測定できます
この測定器は5MHzの発振周波数なのでUHFの回路設計にはちょっと厳しい

こんなのもあるよ!

コイルは測定器できませんがチップ部品の測定には MASTECH社のMS8910が操作性が簡単で 抵抗やコンデンサー ダイオード(TR、FETやICのチェック)にも使えます。2000円でコンタクトのスペア付き。親切な商品です。Beep音付きですので回路チェックにとっても便利。
チップ部品の測定に絶対的な力を発揮します。 基板に実装されたICの短絡やOpenなども確認できて 山椒は小粒でも!!!

道草をしすぎです!!NanoVNAでCLを測定するのでした!!。

まず治具を作ろう

ずーと昔会社入りたての頃、先輩に「ストリップラインでマッチング」???と言われ、何???と思って顔を赤らめたことがありました。
今となってはプリント基板の回路伝送ラインであることは周知です。今回はこれにTRYしました。
  1. 1.6㎜厚の両面プリント基板を 20㎜×40㎜ にカットし、表面に中央に3.5㎜幅のラインを残し他は剥離する。
  2. パターンのセンターを切断して測定端子とする。
  3. ICソケットの丸Pinをばらして部品用ソケットをスリットパターンを、裏のパターンにはアース端子を半田付け。
  4. 両端にMSA基板用エッジマウントコネクターを裏側のベタパターンと芯線ラインに半田付けする。

完成

剥離したパターンに測定Pinを取付(ラインの外のPinは裏面アース)
スリットパターンにMSAコネクターを半田付け
コネクターアースは裏側に半田付け(ベタアースの半田は整合用端子)

実測

NanoVNAを1MHz~450MHzのスパンで校正を実施後ストリップラインに200pFを差し込み測定。通過波形(Ch1)をLOGMAGで見ると共振カーブがトレースされます。スミスチャート上に容量が表示されます。
Ch1にケーブルで治具へ接続、出力Ch0はSMA-P⇔SMA-Pの中継接続
200MHz付近が共振点です。
マーカーでスミスチャート上の容量をサーチすると1MHz~100MHzまでは220pF ~230pF と安定して測定できました。
コンデンサーメーカーで公示されている周波数特性が取れます。できるぞ!!NanoVNA。

共振点が発生しこれを境にコンデンサーとインダクター領域に分かれます。デカップリング回路にて大容量コンデンサーと少量量コンデンサーのパラ使用は、このような理由からです。
以前作成したCh1を使わない測定治具でも測定は可能ですが、容量は半分の周波数迄は230pF が確認できました。NanoVNAで水晶発振回路のチェック
操作は簡単ですがトレース波形が品祖

スミスチャートで周波数をマーカーで追い込むと容量が見れます

59.37MHzで245pFと表示されました
トレースチャートがベタなのでストリップラインのパターンが正確そうですね

コイルはどうかな?

手持ちのチョークコイルを測定
CALを取ってから治具へ挿入
1MHzのポイントで測定すると236nHと出ました
LCRメーターで測定すると同じような値が出ました。
0.2236uHです。そこそこ同じような値が出ました。

この治具はセラミックフイルターや発振子などの特性も測定できます

発振子

9.2MHzのセラミックリゾネータを測る
ソケットにリゾネーターを差し込みトレース
9.2MHzで発信するようですね。

27.46MHzの水晶発振子はどうか?

水晶発振子をソケットに差し込みトレース
ほとんど27.46MHz 100Hzほどずれています

LOGMAGでデップをモニターしていますが、PHASEで位相を見ても発振状態がわかります

この水晶の発信周波数は27,4599から2.1kHz 程度の範囲で発信します。スミスチャートの誘導性のエリアで発信が可能(位相チャートの正極側でも同じ結果です)

フィルターの特性は

CH1を入力として通過特性を見る前にCH0から位相の状態も確認
10.7MHzのセラフィル FMラジオなどに使われる広帯域のフィルターです
センターの足はグランドです外側のアース端子へ接続

位相のチェック

 

Ch0側で反射による 位相の確認です。結構 広帯域ですね

バンドパス特性はどうか?

CH0をLOGMAG設定します。CH0をCH1に設定DISPLAYモードからCHANNELに入り込みCH1 THROUGHで通過の波形が取れます。
10.7MHzのフィルターの波形を見ることが出来ました

10.7MHzのセラミックフィルターは共振インピーダンスは330Ωです。水晶は50Ωですのでスミスチャートはセンターにトレースしますが、セラフィルの入力出力端子のインピーダンスは、50Ωのケーブルに接続されていますので、入出力に整合抵抗を入れれば波形もきれいになると思います。不整合の状態でも6000円の機器とは思えないしっかりとしたトレースです。

興味のある方は入出力を整合して測定してください

いろんな事が出来そうなNanoVNA SWR計だけの使用だけでなく有効活用してください。