NanoVNAで高周波の回路設計(スミスチャートを使おう)

NanoVNAで高周波の回路設計(スミスチャートを使おう)

高周波の設計はやたら敷居が高く、今まで見様 見まねで製作していました。

NanVNAで回路の設計検証をしてみましょう。

NECのガリヒ素のFET NE76084を参考に机上での計測検証をする

スミスチャートの使い方

アンテナを製作したときにNanoVNAとMr.Smith(フリーソフト)を参照してアンテナの最適化(アンテナの入力と反射)つまりSWRを下げる事を行っていました。これと同じことをRFAmpの入力と出力で行えば基本的に整合が取れるということです。

NanoVNAで430MHz HB9CV 5ELスタック( アンテナ製作 第5弾)NanoVNAを使いMr.Smithで検証)

RFAmpの回路設計は、S11(入力側のリターンLoss)とS22(出力側のリターンLoss)をなくす、入出力のインピーダンスを50Ωに整合するのが最適化と考えてください
高周波部品の仕様書には一般的にS-パラメーターと言われる表があります。
NE76084の S-パラ

数字を見るだけでダメ~!と言わないで下さいこの数字をグラフにしたのが S-パラのスミスチャートです

左上がS11(入力端子)右下がS22(出力端子)

さらに細かい情報を活用する

Nano SharpでとったDataにNE76084のS-パラメーター表をコピペして”.s1p”のファイルを作れば、NanoVNA のLoad snp file で取り込んでN7E6084のデーター付きのスミスチャートが取れます。(.s1pのファイルに移行するときはセルをきちんと設定しないと表は作れません)
取り込んだNan Sharpで取ったSmithチャート上をクリックすると周波数と抵抗値(Resistance)と虚数抵抗値(Reactance)の抵抗値が読み込めます。この値をフリーソフトのMr.Smithに落とし込んで適正化を行います。NE76084のS-パラメータ表にはMAGと位相角しか表示されていないが、NanVNAでSmithチャートを読み込むとインピーダンス値 (抵抗値と虚数抵抗値)が読み取れるのです。

NE76084の右下の表と同じトレースが書けます。

NanoVNAの画面でクリックすると、S22の 1000MHz 168.7371-j80.1874 と読み取れます(合致する周波数がない場合一番近い周波数で読み取る)

Mr.Smithによる最適化

N76084の最適化の手順

1.コピペしたS-パラメータをNano SharpでSmithチャートにトレース設計する。周波数にあった「レジスタンス(実数の抵抗値)とリアクタンス(虚数の抵抗値)を読み取る。S22 S-パラメータ 1000MHz 168.7371ーj80.1874
2.Mr.Sunthを開き掃引周波数(Frequency seep)のチェックを外し中心周波数(Center Ferquency)を指定 (1000MHz=1GHz)
3.表示周波数(display frq)が変更されたことを確認し、メニューバーのマーカーをクリックする。(有効にならない場合は画面を「空クリック」→Cancel。 OKをおすと 0ポイントがマーキングされますので 間違ったらErace Marker(DEL)で消去すると前に戻ります。
4.マーカー(M)からImpedance R+jXをクリックしてマーカ周波数設定欄にNanoVNAで読み取ったインピーダンス値とリアクタンス値を書き込むみ OKをクリックすると0マーカーが画面上に表示される。(NE76086の S-パラメータと同じ場所にマークされます)
168.7371ーj80.1874 にマークされたポイントをコイルとコンデンサーを使って50Ωに移動させる
センター値50Ω(50+j0 ≒ 49.999-j271.66mΩ)に最適化する
5.メニューバーのチャート(W)をクリックして Immittance chartをクリックImpedanceとAdmittance chartを表示させる
左側に赤いアドミタンスチャートがトレースされました
6.適正化は画面の中央(50Ω)にコンデンサーとコイルを使ってマーカーを合わせることです。直列補正はインピーダンスサークル(右円 緑)上の移動、並列補正はアドミタンスサークル(左円 赤)上の移動で真ん中に持ち込むこと行います。
7.上記のImpedance R+jX 位置(168.7371-j80.1874)の場合並列補正で50Ωを通過するインピーダンスチャートのサークル上に乗せる。(C補正とL補正がある)

8.回転(R) をクリック Parallel elment をクリックしてParallel CまたはParallel Lをクリックして(アドミタンスチャートの同心円を移動)コンデンサーの値またはコイルの値を入れ込みインピーダンスチャートの50Ωを通るサークル上に移行させる(並列補正はアドミタンスチャート赤い線の同心円)

コイルによる補正(14.5nH)
コンデンサーによる補正(1.0pF)

 

9.アドミタンス(並列)補正でNE76084の1GHzでのインピーダンス値(R+jX)をインピーダンスチャート50Ωの緑円上に重ねる
10.引き続き インピダンスチャート上にある1 ポイントを回転(R) Serieselementを直列補正で50Ωに合わせる C補正とL補正で中央0ポイントに合わせられる。
 (L 14.5nH並列補償)アドミタンスチャート(同心円上)を移行。後(C 1.8pF直列補償)インピーダンスチャート(緑円)上で50Ωにマッチング
(C 1pF並列補償)アドミタンスチャート(同心円)上を移行。後(L 14nH直列補償)インピーダンスチャート(緑円)上で50Ωにマッチング
直列補償はNE76084と入出力に直列にC/Lを接続(インピーダンス補正)、並列補償は入出力にC/Lを並列に接続(アドミタンス補正)となります。

上記の定数は基板のパターンや用途によってどちらかに決定します.

LとCの共振周波数を計算

最短で適正化した共振周波数は f=1/2π√LC で計算されます

適正化の補正値 L=14nH   C=1pF

共振周波数=1÷(6.28×1.4E-08×1.0E-08)=1.35E+09  1.35GHz 概ね1GHz付近であっています。

入力側S11はどうでしょう

NanoVNAへS11の(.s1p)ファイルを読み取り適正化を図ります。随分リアクタンスが大きいですね。NE76084が低い周波数で使いにくいわけが分かりました

適正値

Smithチャートのセンターは50Ωです。チャート(W)をクリックするとSWRの設定が可能です。今回はSWRを 1:1.2に設定したサークル内に落とし込みます。
直列L補正をプラス側迄オーバーランして並列C補正で呼び込んでもOK

1.25GHzで適正化をした場合のチャート

NE76084のインピーダンス値は、概算でS11が 10.673-j224.28Ωで S22は 151.19-j88.165Ωとした。

S11の適正化

シリーズに34nHパラに4.8pFで適正化 。別ルートでシリーズ32nHパラ4.0nHでも適正化が図れます

S22の適正

パラに0.75pF シリーズに11nHで適正化

回路図の製作

 

パターンのレイアウトでコイルやコンデンサーの容量は変化致します。L2は入力側コンデンサーの場所に取り付け並列補正もできます。

後は基板レイアウトの設計をして配線をすれば、1.2GHz 受信プりアンプの製作完成。出来上がったら結果をHPにUPします。