NanoVNA-FV2をスペアナにしよう
- 2024.03.11
- NanoVNAで遊ぼう

廉価版ベクトルネットワークアナライザー(NanoVNA)をスペアナの様に使う方法。
何かと便利なスペクトラムアナライザーの機能をNanoVNAでも使うことができます。
手始めに基準となる測定器のと比較
どのくらい正確か?
基準になる計測器を準備します。標準器は正確な0dBmが確認できる計測器
標準器
校正用 0dB を設定する パワーメーター ML83A
0dBmは高周波電圧の基準になる値です
0dBmとは50Ωの負荷で1mWの出力が確認できるレベルで、出力電圧は223.6mVになります。その他に1μVの負荷電圧を0dBとして読み込む単位もありdBμという単位となります。
高周波の伝送と負荷は基本50Ωのインピーダンスになります。開放(∞の負荷)の場合、50Ω負荷の 0dBmを107dBμと換算して6dBのUPで読込む、単位はdBfとして113dBfとなります。出力電圧1μVはー107dBmです。
高周波電圧計で測定する場合の測定インピーダンスはOpenで、信号発生器の出力設定が0dBmを測定すると6dB Upで447.2mVと読めます。(+6dBは2倍 -6㏈は1/2倍)
高周波電圧計の測定インピーダンス50ΩではなくOpenの理由は、基板上の発信回路の出力などを測定すると低インピーダンス(50Ω)で測定した場合、発信停止や周波数のズレなどが発生するためです。
高周波電圧計で信号発生器の出力を測定

信号発生器の出力を高周波電圧計で測定すると 信号発生器の0dB 223.6mV が +6dB 447.2mVと表示される
理論値になっていますね
かなりややこしいので今回の検証はdBmで比較します。
基準器

無線機の規格表を見るとdBmや dBμとdBfといろいろありますが下表の関係性が有ります。
1mW = 0dBm(W) 1μV = 0dBμ(V) 0dBμ=6dBf はFree(開放)と覚えてください
dBってなんだ?
高周波レベル換算表
dBとは比較単位です。10倍100倍1000倍と対数的に桁が変わっても簡単に計算できる便利な単位です
例えば1μV=0dBμに対して➡2μV=6dB➡10μV=20dB➡100μV=40dB➡1000μV=60dBと変化します
関数計算が苦手な人はExcelの関数計算機能を使うと簡単に計算できます。
式は 20Log(A/B) で表わします。 =20*Log(10/1)とExcelに打ち込むと20(dB)と表示されます
電力計算は 10Log(10/1)となりますので、10(dB)です。アンテナ利得が20dBは100倍になります。これは10Wの出力が1kWになることです。
電力(W)の場合はオームの法則で「電圧の2乗÷抵抗」ですので10dB上がることで10倍ずつ変化します
低周波でも使われるdBm
高周波では50Ωの終端負荷で0dBmは1.0mW(223.6mV)、低周波では600Ωの負荷で0dBmは1.0mW(0.775V)です。
0dBmは基準単位になります。オームの法則を覚えている人は簡単に理解できますね。
負荷端子電圧を2乗した値を抵抗 (50Ωまたは600Ω)で割った値がWになります。
負荷端子電圧が5Vの場合(5×5)/50=0.5W 10Wの送信機のアンテナ端子電圧は22.36Vで100Wの場合は70.71Vです。
実際にNanoVNAとスペアナと比較してみましょう
SGの出力をスペアナで測定してNanoVNAと比べました
基準器(比較基準器)

標準器の校正
標準器の出力が0dBであることの確認

0.00に合わない場合左のコネクター右にあるトリマーで0.00に合わせる。
これで標準機の出力が0.00dBm/107dBμ/113dBf/223.61mV/1mWの標準出力が確保されました
基準器の校正
SGのレベル合わせをします
SGの出力をパワーメーターで測定
信号発生器のレベルが-0.1dBmで基準器の入力レベルが+0.02dBmですのでSGのズレは-0.12dBmずれています。正規な校正でないのでこれで良しとしましょう。
-0.12dBmはどのくらい低いの?
dBの単位は比較単位です高周波電圧計で測定すると223.6mVに対して3.1mVで約1.4%のズレです。
計算は対数を使います。223.6+3.1=226.7mV 20×Log(226.7/223.6)=0.119dB 信号発生器は0.119dB高い信号が出ています
1.4%の許容差は許せる範囲と考えます🙇
これを基準にアッテネーターで基準器(スペアナ)の確認をします
まず-10dBm
-20dBm
-30dBm
-40dBm
-50dBm
50dB以下はNoiseフロアです。測定確度は-50dBが限度ですね。60dB(1/1000)きつそうです。電波暗室で測定すればもう少し・・・・・
NanoVNAではどうだ!!
3MHzまで測定可能なNanoVNAFV2

S21端子で測定開始
0dBm

-10dBm
-30dBm
-40dBm

-50dBm

コスパは1/10ですこれ以上欲張っても仕方がないですね。
NanoVNAの S21測定端子の測定手順
1.画面を軽くタッチしてDISPLAYを出す→右上のDisPLAYをクリック
2.TRACE削除→Trace1から4のうち1Chだけを選定

3.画面上に表示の4Chから不要なグラフを削除
S11/S21の文字の反転表示が削除有効になる
削除アイコンの☑とAマークを削除して必要なChだけにする
BACKをクリックしてChannelがS21(THRU)になっていることを確認
4.FORMAT設定
FORMATキーを押して画面を変えてLOGMAGをクリックしたらSCALE設定(数値10.0)を打ち込むと10dB刻みのラインが出る

5. 周波数設定
BACKで前に戻りSTMULUSをクリックしてCENTERで測定周波数とSPANで測定周波数範囲を設定するとスペアナと同じような波形が出てきます。
注意!! SPANを狭くするとイメージが発生してPeekが沢山出てきます
フィルター特性の評価やプリアンプの性能などS21の端子を有効活用してください。
NanoVNAでCut&Tryの高周波の電子工作が楽しいものになります。
このほかにインピーダンスや位相なども測定できTDRやインパルス、Step応答などの過渡特性の測定可能な小型でローコストの測定器です。
-
前の記事
簡単設置のソーラーパネルを建ててみよう 2024.02.23
-
次の記事
CQ山からこんにちは(郡山市 二ツ石山 FS-232) 2024.04.16