Nano VNA は何が見える NanoVNA活用

Nano VNA は何が見える NanoVNA活用

NanoVNA をアンテナアナライザーとしてSWRメーター代わりに使っている皆様にStep Upの活用を。ベクトル・ネットワーク・アナライザーとして使用する入り口として、簡単な利用法を投稿いたします。

1.LCRメーターとして使おう

  • 自分で作ったコイルのインダクタンスはμH?共振点は・・? 0.7φ0.8㎜の線で11回巻いた線空芯のインダクタンスは巻き線の計算をHPで見ると330nHと算出されました。(https://keisan.casio.jp/)
    • 交流ブリッジで測定すると422nHと出ました。測定周波数は5MHzですのでインダクタンスは高めに出たのですね。
      HIOKI製のIM3570 インピーダンスアナライザーで測定
      NanVNAで測定した場合 スミスチャートの125MHz付近で350nH と表示されています。概ねHPのkeisan.casio.jp の計算値と一緒ですね。

      コイルは使われる周波数で測定(120の倍数で計算されるようです)

コイルは巻き密度やコアの材質でLが大きく変化します、VNAで測れると回路の設計が簡単になります。

2.共振回路もばっちり

  • コイルはコンデンサーとセットで使われます。350nH と10pF の直列共振周波数は? f=1/2π√CLですので計算値では87.65MHzとなります。NanoVNAの測定ではPHASE(位相設定)でトレースされた位相の切り替えポイントが共振点です
  • ビンゴ!! ほぼ86MHzあってますね
関数電卓がなくてもNanoVNAがあれば共振回路の設計もバッチリ、コイルとコンデンサーは周波数で値が変化します、共振周波数はNanoVNAで測定がベストです。

これで同調回路はバッチリです。NanVNAのCh1をLOGMAG設定でフィルターの設計も簡単!

3.安定した水晶発振回路を設計

意外と面倒なのが水晶発振子の設計です。その昔制服を着た中学生が、アマチュア無線の受験で乗った電車で「ハートレー発振回路、コルピッツ発振回路」と暗記していたことを思い出しました。
回路を組んでも発信しない、負性抵抗が大きい。等価抵抗が・・・・あれこれやっているうちになぜか、発振した! 又は古い無線機のPLLの発振回路の安定性が悪く・・寿命!これらは負性抵抗の増加や励振電力の低下でひこ起こされる現象です。

NanoVNAで発振子を見てみましょう

  • 最近の水晶発振子

     

    表面弾性波発振子(SAWR)    ソウ・リゾネーターと呼ばれかなり高い周波数まで直接発振する。
逓倍なしで300MHz! う~ん 50MHzのトランシーバーを作るとき。オーバートーンの水晶発振子は5倍いや 7倍がいいなどと、論議したのは懐かしい話です

SAWRの共振周波数を、LC共振回路と同じくPHASEで測定

304.3MHzのポイントで位相が切り替わっています -(C成分)から+(L成分)に切り替わるところで発振する。

発振子はOK あとは周辺部品です一般的に発振子はトランジスターのベースとエミッタまたはコレクターに接続されます。発振子の負荷になる部品を選択することにより、安定した周波数を発進させることが可能です。位相が+側で発振が可能です。また安定した領域でCとLを調整することにより水晶発振周波数を100kHz 以上可変させることも可能です。

水晶発振子の負荷側を調整することによりに安定した範囲で発振が可能(下記の回路からQ1削除してPHASE測定)
ピアスBE発振(エミッターフォロー回路)

上記回路のQ1を除いたスミスチャート

サークルの上半円の範囲が発振可能エリア
発振回路は水晶発振子の負性抵抗領域が大きくなると発振が不安定になります。水晶発振子の負荷に接続されるコンデンサーの等価抵抗などの影響も受けますので注意が必要です。
又励振レベルが下がると見かけの負性抵抗も変化します。トランジスターのft(遮断周波数)hfe(電流増幅率)やCob(帰還容量)も使われる部品の選定に注意してください。(ftの1/2の周波数で使用のこと)Cobは少ないほうが安定します。
スミスチャートの使い方はNanoVNAで高周波の回路設計

4. 水晶発振子の周波数を動かす

時計のクロックやPCのクロック等、動かないのが水晶でしたが 公私ともにQRH気味 の私としては、動かない頑固な水晶を動かしたくなってきました。

300MHz程度では水晶の発振子の可変範囲は100kHzほどあります。最近はPLL(位相同期回路)Phase Locked Loop が主流になって周波数の安定度は格段に良くなっています。技術が確立していない時代、QRHするVFOでHAMバンドをはみ出して交信を続けOMに叱られていた時代が懐かしいです。
当時は7MHzの混信(当時は100kHzしかありませんでした)を避ける為に数少ない水晶発振子にバリコンとコイルを追加して周波数を可変させたことを思い出しました。なつかしー( ;∀;)。しかしその技術は今も使われています。

今に生きるVXO(可変水晶発振回路)

昔行ったVXOの技術も最近のキーレスリモコンなどはFSK(周波数・シフトキーイング)の安価なシステム使われています

FSK変調は発振子にコイルを追加して、低い周波数をシフトすることにより簡単にFSKの信号を作り出すことができます。300MHzの発振子で100kHz のシフトキーイングが可能です。

FSKリモコンは発振子をコイルとトランジスターで2つの周波数にシフトするという非常に単純なシステムです。
赤く見えるのが シフト用コイル。周波数はコイル成分が増えると大きくずれていきます
信号はこんな感じの電波が発信します

スペアナで見たFSKの信号

左の低い周波数は75kHzシフトされた周波数
          NanoVNAで見たFSK信号
Ch1にループアンテナを接続の波形  (スペアナと比較しないで!!測定器ではありませんので波形の正確さはご容赦ください)
アンテナは同じものですSMAコネクターに同軸を付けた簡単なもの
3.0cmφのループアンテナでピックアップ

最近の通信技術 FSKとPSK

デジタル通信が主流になる通信業界では狭帯域のGMSKが主流です。100kHzも帯域を使うのはSDGSに背を向けることなのですね。
TV放送や大容量を通信するには周波数変調ではなく位相変調を用います。(1Dataあたり90°位相をずらし一つの周波数で同時に4データーを作製、これを4段階にAM変調をかけて、その上22.5°位相をずらして16位相として4階層のAM変調を掛けたものが64QAMという通信方式です)この方法で地上デジタル放送やWifiなどの高速通信を可能にしています。一般的にはOFDMとも呼ばれ多重化した52波のキャリアを 、90°位相をずらして周波数を狭帯域で拡散する方式なります。これにより通信状態の変化やWi-Fiなどで混信しないように周波数を変化させます
衛星放送は
45°位相をシフトした8PSKを使用しています。
地上デジタル放送の64QAMは受信状態によりAM変調の階層を視聴者に悟られないように落としていますので衛星放送の様に画面が消えることはありません。

又、文面がQRHしています。NanoVNAに戻りましょう

5.   NanoVNAのCh1を使おう

さてCh1を使いましょう Ch1も使ってあげないとSMAコネクターが錆てくる?使っていないからピカピカだ! Ch0はメッキが剥げて白っぽくなっています。

まずはバンドパスフィルターを測定

NanoVNAはCh0とCh1に接続、Ch1をLOGMAGで測定します。
自作のフィルターでもきちんと計れます。Refの設定とLOGMAGのGainを校正すればフィルターの性能もきちんと出せます

SAWフィルターとセラミックフイルター

10.7MHzのセラミックフィルター
一昔前のセラフィルです
FMラジオ用の10.7MHzのセラフィルですコイルが無いのにフィルターになるのは不思議ですね
10.7MHzですので、ある程度の帯域幅でトレースしています。
バラックでの測定でインピーダンスも整合していないので波形は汚れています

315MHzのSAWフィルターのトレース

表面弾性波発振子を組み合わせたフィルターです。春日無線(TORIOの前身)のコイルキットを使った年代からすると考え深いものがあります。

315MHzまで周波数が上がるときちんとした治具でインピーダンス補正しないと汚い波形しか見えないです。

バラックでの測定は100MHz以下でないとフィルターの性能測定は難しいですね

バラック配線というよりはチョイ線での結線です。治具が必要ですね
NanoVNAを接続するフィルターやAmpの入出力のスミスチャートを見ると色々な情報が入っています。(入出力の特性)データーの中に入っていますので、使われる素子の特性に合ったコイルやコンデンサーの容量を選定することが出来ます。RFのプリアンプやパワーアンプの製作もNanoVNAをフル活用していただければ、楽しいものになるでしょう。
前回の投稿参照記事

NanoVNAで電波を見よう