電気テクニカル工房(電源)
- 2019.10.06
- EHL工作室
移動運用
創生期
一昨年よりケンウッド製TH-G71、マランツ製C620 ディアルハンディトランシーバーで山岳移動を楽しんでいました。しかし東北(郡山市周辺)より首都圏の局をピックアップするのは厳しいものがありタイトル表記のRFリニアIC(三菱M57704)を入手した機会にパワーUP計画を図りました。
上記のアンテナは山登りを始めた当初のHB9CVとケンウッドTH-G71の組み合わせでしたが、2W送信では電池の消費が大きく電源の補強を計画。
近年トランシーバーの高周波出力回路はICモジュールやトランジスターが低い電圧で動作するものが多くなり6V~8V程度が主流となっています。(12V印加で5W程度)の出力が出ますがハンディ機器の為、放熱を考えると2W(7.4V) での運用がベストと考えます。手持ち運用で火傷はしたくないものです。半世紀前の単一乾電池8本を装着したトランシーバーは懐かしい限りです。
リチウムイオン電池を使おう
リチウムイオン(Li-ion)電池とは
ニュースや雑誌媒体で周知されているのでご存じとは思いますが簡単に紹介いたします。
RVやHYBRID車に使われるように大変エネルギーの高い電池です。単純にニッケル水素電池との比較で、一本の電池電圧が1.2Vに対して3.7Vですので3倍のPowerがあり、エネルギー当たり約1/3に小型化されます。また2次電池特有のメモリー効果もなく、保管状態での自己放電も少ない。これを使わない手はないでしょう。
1)構造と注意点
- 電池構造は乾電池と同様に電極はリチウム処理を施したアルミ箔を電解液に浸漬させマイナス出力電極にカーボン電極 プラス電極にリチウム化合物の電極を設けた電池です。なーんだ普通の電池と同じ構造か・・!しかし乾電池では水を電解液に使用していましたが、高エネルギーを引き出すためにLi-ion電池は発火性のある油性電解液です。過去に一流メーカーがこぞって発火事故を起こしているのは記憶に新しいのではないでしょうか。
- この電池の最大の弱点は過放電による電極劣化で、電池エネルギーが単電池(セル)あたり2Vを下回ると電極劣化で充電復帰が出来なくなります(過放電による電池の破壊)。また充電時に最大4.4Vを大きく超えると過充電発熱で、可燃性の電解液が過熱し発煙・発火事故となります(過充電による電池の爆発)また満充電状態での短絡も電池発熱の要因ですので爆発事故につながります。このような特徴を持つ電池の為 Li-ion電池単体での使用はお勧めできません
- 実際の電池としては保護回路があり、過放電時の出力停止(2.5V~3.0V電圧制御)と短絡時の出力停止(過電流制御)で放電側の制御を行っており、充電側は4.3Vを超えると過充電停止となり充電停止となります。
2)外形構造と呼び名
① 単電池(セル呼称)
- 電池単体の構造として管セル(従来の電池構造)とソフトType(ポリマー化の電解液)があります。管セルは直径と長さで呼称が決まっています。
- 呼称 14500(14φ500mm)18500(18φ500mm)18650(18φ650mm)26650(26φ650mm)などがあります。
- 最近のモバイル機器は軽量化の為ソフトTypeが主流でサイズは目的や構造に合わせた形になります。
② 組電池(Pack呼称)
単電池の組み込み構造で電圧と容量が変わります。単電池と保護回路を組み合わせたものをPack品と呼ぶ。
ポリマー電池は電極構造を積層化することにより大電流の出力が可能ですが、機械構造的に弱い点がある為 過熱による形状の膨らみで、封止部からのガス漏れなどの事故に注意が必要です。
直列接続はS(シリーズ)並列接続はP(パラレル)とし、2直2並列した電池ユニットを2S2Pと呼びます。この場合での保護回路はパラレルでの制御はせずに直列での各電圧制御を行っています。この時の過充電と過放電の電圧値はシリーズとした段数×制御電圧と(例)過放電3V×直列段数、過充電4.2V×直列段数)また各セル単位での電圧認識を行い過放電と過充電の保護を行う形式が主流になっています。
3)保護回路
リチウムイオン電池には何らかの保護回路があります。
- 温度Fuse ・・・・短絡時の過大電流による発熱でFuseを溶断するものです。一度切れたら復帰しません
- PTC保護素子 ・・・・短絡時の過大電流時に抵抗値が増加して回路電流を停止させる。何回かは復帰する
- 充放電および短絡保護回路・・これは一般的に使われる保護制御回路です。過充電電圧検出と過放電電圧検出それに過大電流時の保護回路が組み込まれています
4)実用編
ハンディトランシーバーに流用されるLi-ion電池は2P2Sぐらいがベストです。単電池が18650TypeであればMax8.4V/2500mAh程度ですので1Aの消費電流であれば連続2.5時間の送信が可能となります。これだけあれば運用中にQRTはないでしょう。
小型であれば一昔前のハンディカムなどは18500Typeの1P2Sが主流です、Max8.4V/1500mAh程度なので連続1.5時間程度の運用は可能と思われます。昔の電池Packを活用しよう。そういってもLi-ion電池は入手が難しい・・・・アマゾンで東京マルイからポリマー1P2S 2000mAh品が 2000円で売ってました。探せば見つかります。
10WのPowerアンプの製作記事は下記サイトをご覧ください「RF Power アンプ製作」
無線テクニカル工房(アンテナ製作430MHz17EL✕2 他)
5)充電器を作ろう—改造です(ハンディトランシーバー用電源)
原則的に定電圧・定電流での充電になります。電圧設定が可能な直流電源があればOKですが、そこはアマチュア技術者。 SW電源アダプターを改造して8.4V電源を作成する。
① 市販の12V又は6Vのアダプターを8.4Vに改造
通販で購入の6V2A/12V1A程度のアダプターを8.4Vに改造。解体はプラスチックニッパーなどで角部分を切り裂き、マイナスドライバーなどで開封
ケースから基坂を取り出し2次(低電圧部)を見つけ出す。ポイントは1次と2次を帰還させるフォトインタラプター (4本足のDip部品、昔の呼び名はホトカプラー)近くの2次回路に三端子の基準電圧発生のトランジスターのようなものがあります。1次と2次の区分は基板にスリットがあるものがある。この側近に周辺の抵抗より小さく4桁表示の抵抗の値を変更すると電圧が変更できます。
自己制御Type(1次側のみで出力制御するType)
改造の注意点
1次発生電圧はDC140Vを超えているので作業は十分注意して行う。抵抗を仮接続して希望の電圧が確認できたら半田付けする。測定確認の時のみ通電でそれ以外は電源プラグを外し出力が完全停止していることを確認して作業をする。
- 自己制御(2次帰還しない制御回路)ではホトカプラーがないので制御ICの付近の4桁表記の抵抗を探し出し抵抗値を変えます
- 誤操作で出力停止する場合がありますが1次側140Vの電圧が完全に低下すると復帰する場合があります。1次制御のFETのソース抵抗を低くすると出力電流は上昇しますが安全を考えると推奨できません。
② 10W機を動かそう(17V電源Packの充電器)
- ジャンク品の入手は秋葉原でも大変になりました。しかし「捨てる神があれば拾う我あり?」地方でもハードオフなるジャンク屋さんがあり(中古品屋さん?)PCの中古電源アダプターが300円で売っています。しかも 15V/19Vの4A/3Aこれこそ宝の山です。 さっそく改造目標は4S2P 17V用充電器機を作りましょう。
- 10Wでは13.8Vの電源を必要としますがLi-ion電池に満充電させるためにはセル当たり4.3V必要なので 4.3×4=17.2V必要です。手始めに17.2Vの電源を作り 電池側で13.5Vの安定化電源を作る手はずになります。電圧の差は制御トランジスタ(2SD2401)のLossになりますがSWレギュレーターのようなNoiseはないので無線機にはベストかな?と思っています。実際の負荷状態では2A程度では17.2Vが15Vまで電圧降下します。(ケーブルLoss 含む)TRのLossは最大1.5V×2.5A=3.7W、受信時は電流が数十mAと推定されますのでLossは3.7V×0.1Wですので0.4W以下のLossです。アマチュアには許容範囲とさせてください。ちなみに制御用のトランジスターのPoは大きいものがベストですが入出力の電圧降下を考えるとVce(sat)の少ないもの、Ibの少ないものを選んでください
- 解体8.4Vのアダプター同様にケースを解体する
- 内部のシールド板を広げ基板を取り出す
- 電圧調整の抵抗を探す・・・これは8.4Vの電源改造と同じでホトカプラー近くの3端子基準電圧発生素子の近辺の4桁表記の抵抗を2点探して・・・・・あとは200kΩ程度の抵抗を目的の抵抗にパラって電圧変化を確認し最終的には交換又はパラ接続で対処
- 抵抗値の算出はオームの法則で抵抗が直列の時はそのまま値をプラスすればいいのですがパラの場合は次の計算式で R1×R2 /(R1+R2) で求められます。
- 希望の電圧が出れば適当な負荷とテスターで出来栄えを確認してください。できれば電子負荷なるものがあると完璧です
③ 使用例 ハンディトランシーバ電源
- 7.2V(2P2S) バッテリーユニットを充電器に接続8時間経過後、充電器から取り外し8.2V程度で充電終了。専用の接続コードを作成してトランシーバーに接続して使用する
- 市販されているSWレギュレーター回路のアダプターは定電圧・定電流(CV・CC)出力となっています。充電が進み満充電に近くなるとCCモードが電池端子電圧に対応して充電電流が絞られてきます。一般的には2000mAh程度のバッテリーパックの場合、充電電流が50mA程度になった時が充電終了とします。
- 充電電圧があがればさらに充電が可能と思われますが、電池に接続された保護回路がある為に、1Sあたり4.3V程度、2Sの場合8.6Vが、充電停止です。充電器の電流容量が大きければ充電は早く済みますが、電池の内部抵抗分(電池の内部インピーダンス)が電流分の電圧降下と端子電圧に対して電流に見合った電圧をロスしますので低電流で長時間充電したほうが賢明です。
- 一般的に電池の寿命から充放電の繰り返しは電池にストレスを与えますので定格*000mAh(1C)であれば半分(0.5C)の 電流で充電、1/5(0.2C)で放電がベストとされます。少ない電流での充電/放電が電池の寿命を延ばす秘訣です。
④ さらにPowerUP
せっかく作った430MHzのリニアこれを動かす為に移動用のLi-ion電池、2P2Sの7.4V5AのバッテリーPackを4ケ接続し15V10Aの電池ブロックから12V10Aを取り出す。(オーソドックスに PowerTRを使った降圧Type)出力ロスが気になりますが出力5A程度では発熱も少なくそこそこ移動には使えます。ローカルのOMさんにFT-817用の電源として2P4S(13.8V5A)の電源を作ってあげましたらたいそう喜ばれました。(前記 2P4S 12Vユニット)
-
電池Unitの使用注意
-
Li-ion電池の一般的に規定される注意事項
- 電池を規定以外の電源で充電しない(発熱発煙の事故の可能性がある)
- 電池を過熱しない(車内部に放置しない 80℃を超えると電池の劣化)
- 電池を燃焼しない(満充電状態で火中に放置すると爆発します)
- -5℃以下で使用する場合充放電の性能低下します(常温復帰する)
- 分解は絶対しないで下さい(単電池の短絡は爆発事故のもとです)
- 廃棄する場合塩水に浸漬 (エネルギーを 0 として処分)
-
使用での注意
- 電池Unitの出力を短絡すると出力停止が復帰しない場合があります、その場合は再充電を実施することにより電池Unitの 保護回路を復帰させ正常に戻ります。(過放電で6Vor12V以下になったときの解除も同様)
- 電源線の使用は容量に見合ったケーブルを使用する事、 大電流の使用は避けてください
- 絶縁が剥がれた電池の金属部が露出した場合、単電池の短絡事故の原因になりますので絶縁テープなど補修すること
- 高温放置や大電流で長時間放電を繰り返すと接続された電池劣化が進む。(直列のダメージ多い単電池あるため 8Vor16V以下で充電終了してしまう)
- トランシーバーの内臓電池と(ニッケル水素など)と並列での使用しますと、内蔵された電池に過電流が流れる危険あり。内臓電池は取り外して使用の事。
- 使用中に電池がエンプティ状態になると出力電圧が6V程度ですので受信状態は動作するが送信では出力停止します。(早めに無線機の電圧モニターを確認して充電後に使用。保護回路がある場合は電池出力0Vでも再充電で電圧復帰します)
- 無線機の出力電力をあげる為、多種類の電池との直列使用は絶対に避けてください。同一特性のLi-ion電池で充電しないと電池劣化や事故につながります。
最後にLi-ion電池基本的な使用方法などを電源編2で後日紹介いたします。
重複記事がありますが参考記事をどうぞ。
-
前の記事
記事がありません
-
次の記事
ジャンクで作るアマチュア無線機器(無線テクニカル工房)アンテナ製作 他) 2019.11.04