無線テクニカル工房(NanoVNAで430×2Tune UP 第2弾)

無線テクニカル工房(NanoVNAで430×2Tune UP 第2弾)

自作アンテナも1年以上使っていると、それなりにどのような特性か検証してみたくなってきました。NanoVNAをフルに駆使すればアンテナにも磨きがかかります。今回は430MHz用の10ELスタックをTuneUpします。

TVアンテナの廃材を使った、ホームセンターパーツ流用の 17ELスタック(最近は17ELは長過ぎなので10ELで使用しています)

17EL×2は移動用には不向き、風が強いと大変です(ビームがシャープすぎます)

430MHz 10EL スタックのアウトライン

電気工事用の17φ隠蔽PVパイプをブームとして分岐クランプや壁面の取り付け用両止めサドルを駆使したホームセンター仕様となっています。

TVアンテナの廃材もフルに使用しています。10mmφのアルミパイプとラジェーターBOXを流用しています(BOXをUバランの整合に使用)

10ELアンテナ寸法参考資料 (単位mm)

輻射器エレメント

設計の計算値はλ/10≒692.8mm/10mm λ/d≒69 は下の表から≒58+j0の線を下に延長して、導線長さ0.46λとしました。輻射器長さは692.8mm×0.46λ≒318mmです。実寸は330mm、12mm長いです。(ダイポールと八木では条件が違ってくる?)

輻射器のインピーダンスは58+j0となります。緑は標準のダイポール

Mr.Smithでインピーダンスの推移を計算

輻射器インピーダンス58+j0(輻射器330mm)

Uバランを0.633λ(693×0.633×0.67=293.4mm)引き回すと、1回転ちょいでアドミタンスチャートとクロス。80nHパラで整合予定(0.5λでチャート上で1回転します)

ほぼSWRは 1:1.5 エリア内にいるので、このままUバラン接続をせず50Ωの同軸を接続して運用する局長さんが多いのですが、基本的に平行空中線に不平衡の同軸を接続するのはコモンモードの不要ループができます。(同軸の引き回しによってSWRが大きく変化する)これを防止するのが平衡/不平衡のバランです。(アンテナ給電部にUバランを使用)

 

シングル八木でのNanoVNAでの波形 < Center(433MHz) Span(30MHz)>

世の中計算通りには行かないですね。シングルでNanoVNAで測定 SWR 1:1.27 ズレていますね。これで1年以上使っていました。しかしズレてるのは間違いないです。

帯域が広く安定しているのですが。Lの補正が足りないようです

チャートポイント 53.2-j29.7㎊(12.4Ω)です。パラに入れたコイルの補正が少し不足気味です(インピーダンスチャート上にいますのでシリーズの補正も?エレメントが少し短いか?)

-j29.7㎊=12.4Ω?

NanoVNAのj表示は抵抗ではなく uHやpFの表示です。jRに換算が必要、はしょってごめんなさい。12.4Ωは 「ωL・1/ωC=抵抗」ある周波数の位相角での抵抗。

L成分=2πfL(チャートの上半分+jと表現)C成分=1/(2πfC) (チャートの下半分-jと表現)となります。

計算値は1/(6.28×433MHz×29.7pF) 12.4Ωにならない?計算単位はすべて1です。   k/M/GHz ・m/µ/nH・µ/n/pFは換算しなければなりません(2πは6.28です π=およそ 3 はやめてください😭)

換算表

計算単位は1です指数を行うと間違いが少なくなります。

          1/(6.28×433E+06×29.7E-12)=12.38215Ωとなりました

        高周波の趣味を持つ方なら必ず覚えてほしい!

 コイルは Z=ωL コンデンサーは Z=1/ωC   で計算されます

アンテナの調整に話は戻る

スタックにするとチャートは-jから+jに変化してしまいました、うねりも多く2枚の八木のエレメントが影響しあっている様です。とりあえずパラに挿入したコイルを外しました。

TVアンテナ改造のケース(コネクターにパラ挿入したコイルを削除)

スタック状態ででコイルを外すとSWRは1:1.17ですシングル八木と同じレベルに戻しました。-jが+2.54uHまで上がった位置にプロットされています。

スタックでのNanoVNAチャート Center(433MHz) Span(30MHz)

54.4+j2.54nH(54.4+j6.9)の位置にいます。ほぼ50Ωです

Uバラン上でのインピーダンス推移がスミスチャートのぐるぐるとSWRチャートの波の上下で、適切にUバランの長さを調整すれば、スミスチャートを中央(50Ω)SWRを底に設定することは可能です。

あくまでもスタック前の状態で50Ωに最接近させること。50Ωから外れるとQマッチや同軸の引き回しや長さによって50Ωからずれた範囲で、スミスチャートのくるくるが始まりSWRの大波小波が襲ってきます。

この辺が妥協点として自己満足をするしかないですね。シングルでのアンテナ調整は計算である程度追い込めます。スタックになると計算外の事象が増えてきますが、アナライザーがあれば調整は少し楽になります。

 

 

スタックの構成

この項目はブラシアップとは関係ありません参考記事です

ブーム間隔は1λ(70cm)Qマッチは3/4λ×同軸短縮率0.67≒34.8cm(5C2V) です。Qマッチの Web記事は沢山ありますので参照してください。短縮率が不安なので5C2Vを40cmで仮り接続させ、終端2か所に50Ωの負荷を取り付けて、SG出力(433MHz0dB)を無線機側に入力させ75Ωのケーブルを、コモンモードのピックアップセンサーで確認すると分岐から35cmでピックアップの出力ディップ。短縮率は0.67で合っていました。

パッチンコアで作った洗濯ばさみのコモンピックアップ500MHzまでであれば問題なく使えます

50Ωと75Ωの分岐はMコネ♀1とMコネ♂2と17φのPVパイプ中継のクランプです

中継クランプの中央のリブを残しカット、M接栓♀に5C2Vを半田付けクランプにねじ込む。接着剤を充填後アンテナ接続のM接栓♂を半田付けテーピング。

簡単にスタックキットが完成いたしました。

マストクランプは同じくホームセンターで穴あきプレート(120×80×t2mm)を購入。22mmのスタックブームのアルミパイプに穴を開けコの字型の角ボルトで固定、マストにはUボルト2ケで固定します。 アンテナとスタックブーム接続はT型分岐クランプ(太さ調整にインナーパイプを内装)を使い蝶ねじで固定

最長交信距離はFMにて木曽の御岳です。400kmくらいあるのかな?

NanoVNAでの測定結果は計算値と大きな狂いがなく、そこそこの性能が運用で確認できているのでおおよその推定ができましたが、運用実績とSWRの値などを考えると自作のアンテナでも十分使えると自信を持ちました。

17ELは山岳移動時は4分割です。これにポールとスタックブームが・・・・無線機も電源も  無理だー!!

最後に、移動用には10ELスタックで扱いやすいアンテナになりました。QRPでもHighPower局と同等に対応でき、電源事情の悪い運用にはこのぐらいが最適です。またQRMの状態でも山岳反射やスカイツリー反射も楽しめ、430MHz特有の楽しみ方ができます。体力に合ったアンテナを使いましょう。