面倒な面実装のIC交換(電子基板の修理)
- 2025.02.03
- 電気

電子基板は電化製品の電子回路が組み込まれた板です。ガラス繊維が練り込まれた物や難燃性樹脂で作られた、板の表面に製品が動作する回路と電子部品が搭載されています。
NVDIAの生成AIのICも例外なく基板の上に乗っています。ずーと昔はアルミ弁当箱のようなケースに真空管や抵抗、コンデンサーが立体的に組み込まれていましたが、トランジスターが出来て電子回路は平面になってきました。
創生期は基板(プリント基板)配線をエッチング印刷して電子部品を基板に穴を開け挿入していました。その基板をDip基板と呼びます。その後製品の集積密度をあげる為、基板の表面に電子部品を接着半田する面実装基板が主流となっています。
初期のDip部品の配線設計をした時、自動挿入マシーン(インサートマシーン)の製造部署から、ラジアル部品(トランジスターやコンデンサー)がマシーンのチャックがぶつかり部品が挿入できない(# ゚Д゚)とクレームを受けたことを思い出されます。
部品交換
不具合個所を検出して基板に挿入された部品を取り外し、良品の部品に差し替える作業が部品交換です。
2端子の抵抗やコンデンサーは片法の端子を外して、テスターなどで抵抗値やコンデンサーの容量を計ることにより、不具合を確認することが出来ます。
取り外さなくてもオシロスコープなどで信号を可視化して判断することも可能です。
Dip部品の交換
2端子部品は部品の付いてる反対側(パターン面)の片側リード半田を温めてピンセットなどで、リード線を引き抜きます。部品によりクリンチされ抜けにくくなっていますので半田ごてでリード線を修正します。
部品取り外し用ピンセット

ICや細かい場所の作業はバキュームの半田ごて(HAKKO 474)が便利です

Dip基板に挿入された部品の取り外しは片面のパターンの場合簡単に外せますが、両面基板やスルーホール(穴の内側に半田メッキが処理されている)はバキューム半田ごての助けが必要です。
少額部品であれば部品の付け根からリード線をニッパーで切断して、パターンを温めて部品側から竹串のようなもので差し込み部品リード線を押し出して抜き取るのも簡単ですね。
DipTypeのICは引き抜くのが大変です左右のリード(ムカデの足)を予備半田して足全体に半田の土手を作り半田を鎔かしながらICの底に先端を曲げた小ドライバーを押し込みテコの応用で抜き取ると簡単です。
最近は面実装の基板が多いので各種道具が出回っています
ピンセット半田ごて チップの抵抗やコンデンサーを取り外すのが簡単

この様な機械が無くても半田ごてが2本あれば簡単に取り外しや取り付けができます。
QFPなどのICはヒートブロアーがべんり(暖め過ぎると基板を焦がします)

面倒な面実装のIC交換
SOPやQFPと呼ばれる10Pin~100PinのICはヒートブロアーで外すのが一般的ですが、半田ごてとちょっとしたアイデァでQFPでも外すことが出来ます。
CR部品(2端子の部品やSOPのICは半田ごて2本で取り外しや取り付けを行う
半田が融けたら部品は浮き出し表面張力で半田ごてに吸い付きます。もう一本の半田ごてで位置修正をします
SOP(二方向のリードIC)もリードに半田を盛って半田を融かす。ICを浮かして半田ごてを箸のように使いこなして取り上げます

ここまでは簡単。QFPは難度が上がります

新兵器登場‼ ここで使われるのは付箋紙
半田をまんべんなく温め、周囲部品の少ないICの角を辺を集中的に温めピンセットで少し浮かせる。浮き上がったらICと基板の隙間に付箋紙を滑り込ませ少しずつ奥に差し込む。

スルスルと入っていきます。(もう一息)
ここまで来れば取れたも同然。取れた‼できるぞ剥離祇

基板とICの間には剥離祇ですのでパターンに傷はついていません

捨てる紙あれば拾う紙ありです。アイデア次第でゴミも大活躍でした。
キーレス玄関ドアの修理
長年使用した電子機器が急に動作しなくなった。玄関 扉のキーレスSystemです。ドアの開扉モーターは回るのですが閉扉がエラーを起こしています。どうやらモーターが反転しないようです。
10年近く使っていたのですが、家電製品ではないので買い替えは・・・・ドアごと交換? とりあえず解体してみよう。
不具合分析
室内に設置されたダブルロックキーの施錠システム。上側のロックUnitに電子回路が入っていました、下のUnitは追従するようです。
モーターからの配線を追跡するとモータードライバーの出力が停止しています。モータードライバーの入力はマイコンから正常に出力されている様ですが・・。
出力ポート(モーターの配線を外してテスターのダイオードレンジで測定)
出力ポート+側と対アースは0.4V程度のVfで立ち上がっているのですが、―側と対アースは0Vです。Shortしていました。
多分、落雷時のサージ電流が下側のUnitから回り込み出力ポートが破損したものと想定されます。
リモコンの反応はしているようなので無線系統ではないでしょう。下側Unitに耳を傾けると反転モーターの音が聞こえないので、モータードライバーと推定
ドライバーICは6552と表示されていました。2ChのMos出力のモータードライバーです。
2ポートで正転/逆転しているので動作中は出力ポート(モーター端子)はどちらかがHighで片方はLowです。
正規動作は片方がHighでもう一方はLowです。逆転は両方Lowでした(回っていない)。アースと出力ポートの測定はモーターを外し測定。未通電で基板をチェック、テスターのダイオードレンジで測定するとHighになるレンジは0.38Vと測定されますがもう一方は 0V。
出力ポートがアースにショートしているようです。カミさんに事情聴取すると、先日の落雷以降に動かなくなった。との事。
測定ポイント(基板ベース)
測定状況

出力ポートの寄生ダイオードがテスター(赤/グランド)― (黒/出力ポート)で測定すると0.376Vと測定されました。NG品は0Vです。
基板単体でも同様の値が確認。ここまで調査したら部品交換です。
目が見えない
やっとのことで新しいICと交換。モータードライバーはソフトウェアーが無いので交換だけで済みました。

組直して正常に動作しました。なんでもチャレンジが大事ですね。QFPのICでもファームがあればマイコンの交換も可能ですね。ぜひ両面テープの裏紙でIC交換を実施してください。
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