SSBは消費電流が流れないのになぜPowerが出るの

SSBは消費電流が流れないのになぜPowerが出るの

FM動作とSSB動作では出力を測るとFMの場合、消費電力1/2の計算値と出力パワーがほとんど同じ(周波数が高くなると効率が下がります)なのにSSBにするとなぜか入力電流が流れず、パワー計の出力が少ないような気がしている方が多いと思います。

実際に細かく測定してみましょう。

使用する測定器はオシロスコープと電流を測定する検出抵抗にテスター。それに終端ダミーロードのパワー計です。通過型のパワー計は電波が空中線から放射されますので、ローカルさんに叱られます。

FMの場合の消費電流と出力のパワー

パワー計で出力を確認
M57704を使ったアンプを12Vで駆動時のパワーは約16W

その時の消費電流を測定

電流置換で測定しました
10mΩ抵抗の端子には27.7mVの電圧が発生
10mΩの精密抵抗を電源と無線機にシリーズに接続その時流れる電流で抵抗に発生する電圧を測定します

検出抵抗

これを1ケ作っておくと何かと便利です。

電流の計算

この抵抗に発生する電圧と抵抗値(10mΩ)の商が電流値になります。27.72mV÷10mΩ≒2.77A
2.77A×12V=33.2Wの消費電力です。高周波出力は入力電力の約50%ですので16.6Wとなりパワー計の出力とほぼ同じです。(但し周波数が高くなると効率がどんどん悪くなります)

この状態のオシロスコープの波形測定

デジタルテスターとほぼ同じに27mVの測定結果です

FMの周波数スペクトラム

FMの無変調は中心周波数の状態を維持しています。変調がかかると変調周波数に合わせて周波数が拡散します(高い変調音ほど中心周波数より周波数が高くなります(出力は常に出ています)

SSBの送信時のパターンはどうか?

音声の変調と同期しパワー計は音声と共に不安定に動作します。電源の電流計も連続音声「あ~Test」でピークを見ると、それなりに電流は流れているようですが、FMよりは流れません。
  あ~Testの音声の最大電流を測る
Peekで2.5A程度です。FMほど電流は流れません

実際に流れる電流をオシロスコープで測定

前回同様抵抗の端子電圧を計るとPeekは29.8mV、2.9A程度流れます
One・Two・Three と音声に同期して流れる電流のパターンモード
Peekで2.9A流れていますが音声がないときは消費電流は0です。平均すると消費電流は1/3以下でしょう。供給電源の消費電流は音声の平均値ですので、見た目には少ない電流表示となります。しかも音声信号に同期した消費電流なので圧倒的に電流は少なくて済みます。

SSBの出力

音声が入力されたときだけ拡散された信号が出力されます。しかも中心周波数のキャリア信号は抑圧されて出力回路には出ずに、上下に拡散される変調された搬送波は片側だけなので圧倒的に消費電力が少なく済みます。

FMの場合は搬送波(Carrier)は常時発生して周波数が音声に連動して変化する変調方式なので、前記の様に消費電流は常に流れっぱなしになります。必要な信号に対して搬送波に占める消費電流が多いのはAMやFMの欠点といえます。デジタル無線機もFSK(GMSK)による変調方式です消費電流はFMとほぼ一緒でしょう。消費電流の少ない変調方式はSSBとCWです

SSBは搬送波抑圧で信号の側波帯波はUSB又はLSBの単側波帯(Single  Side Band)のみのエネルギーで済みますので、非常に経済的なアナログ通信といえます。

山岳移動をメインで運用するアマチュアには、小さな電池で長時間運用ができますので最適な変調方式といえます。