リチウムイオン電池を再使用
- 2021.07.21
- 電気
最近リチウムイオン電池のユース品がリサイクル店やジャンクshopに出回っています。
特定ユーザーからの放出もあり、それらを再使用することは非常に喜ばしいことなのですが、You-Tube や ホームページに「50本のNi-ion2次電池をバッテリーチェッカーで検査したら48本良品!!」などの嬉しい試験結果には ご注意ください。
不良の烙印を押された電池パック
なぜ? その電池パックが不良と判断されたか? それらの電池は多セル構造で 4S, 5S, 6S と言われているシリーズ構成の電池パックです。市販品の製品は安全性を考え全セルの電圧をチェックしています、乾電池の使用注意事項に「古い電池を混ぜて使用しないで下ださい」とあるように、リチウムイオン電池は乾電池よりエネルギーが4倍以上と言われています。その為に1ケでも電池容量が劣化した場合、その電池ユニット(電池Pack)は不良としなければなりません。
それを解体してバッテリーチェッカーでOKの判断で、安易な再組み込みは甚だ危険です。
バッテリーチェッカーでOK判断品を使用する場合は1本(単Cell) 使用を守る事
バッテリーチェッカーで検査して、多セル構造に修理しても数十回使用すると、電池の保護回路が不良と判断してNGを表示してしまいます。
OCVとインピーダンス
どうしても再使用したい!修理したい!この場合 最低2つの条件を満たさなければ再使用はできません。それは開放電圧(Open Circuit Voltage)とインピーダンス(Impedance)です。
インピーダンスと聞くと頭が痛くなる人が、数多くおられると思いますが、直流内部抵抗とお考え下さい。市販のバッテリーチェッカーにも直流内部抵抗をチェックしているものがありますが、18650 Typeの電池内部抵抗は30mΩ以下です。とても正確に測れていると思えません。なぜならば電池ホルダーの接触抵抗は片側の電極での5m~10mΩ程度の接触抵抗があります。その為リチウムイオン電池は電池電極での接続はなく、すべて抵抗溶接となっています。
どうやって測定するの?
一般的な電池内部抵抗の測定器
測定器は交流ブリッジです 発振周波数は 1KHz と自作できそうですね。問題は直流バイアスがかかった状態でも測定できるブリッジです。秋葉原で売っている交流ブリッジでは測定できません
計測器と言われるHIOKIの交流ブリッジはDCバイアス設定が出来ましたので5Vの電池までは測定できました。
交流ブリッジが無ければどうする
もともと直流内部抵抗です。オームの法則を中学校時代学習してますね、忘れていない人は、ピン!とキタでしょう。
電圧降下法を使います。製品(使おうと思う負荷状態)に近い二つの負荷を接続して電圧を計るだけ。2 点間の負荷設定(この時の電圧降下と電流変化の商が直流内部抵抗)
例えば
4.1Vに充電した電池に 4Ωを接続時の電圧⇒3.9V その後 2Ωの抵抗を接続 その時の電圧が3.88Vであった場合 オームの法則から
4Ω接続 電圧3.9V (3.9V/4Ω)=電流0.975A 2Ω接続 電圧3.88V(3.88V/2Ω)= 電流1.94A
(3.9V-3.88V)/(1.94A-0.975A) =0.0207Ω 直流内部抵抗は20.7mΩと算出されました。
流れる電流は2Aです、抵抗は10W程度必要。ちょっと面倒ですが使われる電流(負荷)にマッチしたインピーダンスが測定されます。
この内部抵抗を直列使用するセルはそろえる必要があります。充電と放電の終了時に同じ状態で推移させる為です。
OCV(開放回路電圧)
これは簡単です。デジタルテスターで測定した電圧ですが。組み立て前に1/2充電に電圧をそろえてください。
安定化電電を3.6Vに設定して端子電圧が3.6Vになるまで充電します。2500mAhの電池であれば、1Aで1時間程度でしょう。1/2充電が終了したらすべてのCellのOCVを測定して±5mV以内にそろえてください。(電圧が高いCellは負荷接続で3.6Vまで落とします)
こんな時は電子負荷があれば便利です
以前6000円で購入した60Wの電子負荷 電池は10W全後ですから 5Sくらいまでは負荷として使えます
電子負荷が無い場合は、抵抗を接続しても代替えが可能です。電圧が近似値になったら全セルをパラ接続という方法もありますが、1/2充電でもエネルギーは残っていますので、逆接続すると大変なこと(事故)になります。お勧めはできません。
再組立ての注意事項
電池は熱に弱い商品です。しかし抵抗溶接機は持っていない。タイマーユニットを使って数msの短時間に大容量の短絡電流で溶接するのも方法ですが、いちいち溶接のシステムをバラックで・・・・これがあればと・・・・・
大量生産するのであれば必須です
無いものねだりはやめて解体時に溶接してあるニッケルの電極をCellに残しておきましょう。後で半田付けです。だだし電池ユニットには温度保護素子がついてる場合があり、半田の付け外しは要注意です。
温度保護の部品はPTC(正抵抗温度素子)サーモFuse(温度Fuse)には特別な放熱加工処理が必要です。
電池Cellに付属したニッケル電極にリード線を付ける際もクリップで放熱したほうが良いでしょう
保護回路は何を監視して電池や製品を守るの?
メーカ品は上記のセル管理の他にBMSと言われる保護システムが使われています。
一般的な多Cellの保護回路(1P4Sの場合)
- 左上のFET 2ケは 充電用SW と 放電用SW です。
- 右下の抵抗は短絡や過電流の検出抵抗です(Vss-VINI間、そのほかにFETに流れる電流をVMP-VC1で検出)
- Pin12.13.14.15で各Cellの電圧を検出しています(Cellバランスが崩れると各電圧の差が大きくなり早めに充放電終了)
- Pin5.6は過充電過放電検出の遅延回路
- CTLとSELは外部制御用端子と3S/4S切り替え端子
概ねこのような監視を行い保護回路としています。このほかに温度検出などの回路が付加されます
近年は 市場にてBMS基板が安価で発売されてます。上記のセル管理を守ってユース品LI-ion電池をポータブル電源として Full活用してください。
-
前の記事
郡山から川内村へ 2021.06.21
-
次の記事
VU移動運用のアンテナと電源 2021.09.22