144MHz用7EL×2アンテナ製作(アンテナ製作 第9弾)

144MHz用7EL×2アンテナ製作(アンテナ製作 第9弾)

壊れたアンテナでもしっかり修理。今では144MHzの7ELスタック移動運用の主力装備です。

OMからアンテナを譲ってもらったが、ほとんどが物置保管になってるという話をよく聞きます。しかもラジエーターの部品が破損して粗大ごみとして保管。何とか使ってあげましょう。

アンテナ製作も9弾目の投稿です。給電部の製作をメインとして、どのようにリニュアルするかを紹介したいと思います。

ベースのアンテナは7ELの八木。ラジェーターが破損したアンテナです。1年前までシュペルトップで給電していたアンテナですが、シュペルトップの整合ケーブルが邪魔くさいので再設計となりました。

無線テクニカル工房(NanoVNAで2m7EL×2のTune UP)

給電部の検証

給電部のラジェーター(輻射器)は無いものとして給電部のダイポールアンテナを0から設計します(組み立て上 面倒な折り返しTypeのフォールデットダイポールを避け一般的なダイポールアンテナ構造とする。ガンママッチも避けましょう)

移動運用専用アンテナです、出来る限りシンプルに作ることが基本です。

ダイポールアンテナの正規化

以前の記事と重複しますが邪魔であれば読み飛ばしてください

一般的にアンテナの短縮率が95%付近とよく言われますが、これはダイポールアンテナが73.13Ω+j42.55のインピーダンスを持ち、リアクタンスの+j42.55(インダクタンス)成分を 0 に見立てる為に短縮することです。

短縮率はエレメントの太さで変化します。仮に145MHzで9mmのアルミパイプを使った場合 300,000/145MHz=2,068.9mm/9mmは λ/d = 230で赤い縦のライン上になります 。入力抵抗は73.13Ω+j42.55から63Ω±j0にプロットされました。これで同軸の長さが変化しても周波数が多少変化してもインピーダンスは大きく崩れることはなく安定したアンテナとなります。この時のエレメントの長さは0.475λより少し短い長さ(2,068.9m×0.47λ)= 972mm です。ラジェーターの長さは決定いたしました。

インピーダンスの整合

0.47λの短縮率でラジェーターは972mmになりましたがこれを50Ωに整合させる必要があります。前記の様に正規化してもアンテナのインピーダンスは63Ω±j0Ωです。このまま使ってもSWRはそこそこの値を示しますが、同軸の長さや引き回しによってSWRは変化します。

ラジェーター部の改造

Uバランを使ったマッチング

Uバランは同軸を使ったアンテナのインピーダンス整合を行うマッチングです
輻射器のマチングBoxは以前から実績がある、廃棄されたTVアンテナの給電部のケースを流用。今回のUバランは28cmと短めにしました。 参考リンク 無線テクニカル工房(アンテナ製作 5EL八木 2m)
0.137λのUバランによるマッチング、コネクターに200nHパラ接続

平衡//不平衡?

輻射器のダイポールアンテナは左右平衡ですが同軸は不平衡ケーブルになっています。ディファレンシャルモード(ノーマルモード)とコモンモードを理解しないと???。
見た目にも左右対称のエレメントに不平衡の同軸ケーブルをつなぐのには違和感がありますね。
信号は給電(送信機)側から負荷(アンテナ)へ電力を送る時、給電線以外に地面やアンテナマストその他の周囲を伝って流れる信号があります。これをコモンモードの信号 又はノイズ信号と言います。この信号・ノイズを極力抑えるケーブルが同軸ケーブルです。しかし給電部のインピーダンスが正規化されても給電部のバランスが取れていないと、同軸ケーブルの引き回しにより同軸の被覆導線からコモンモードの不要輻射によるアンバランスが発生します。給電部の平衡が取れていないと効率よいアンテナとは言えません。

アンテナバランス

折り返しダイポールなどではUバランで200Ωの平衡アンテナを不平衡の50Ωに変換する方法がありますが、短縮したダイポールアンテナの63Ωから50Ωの変換も同じ方法で可能と考えます。

200Ω折り返しダイポールでの検証

1.2GHzのラジェーターの正規化の場合 製作記事 1200MHz 20EL (アンテナ製作 第6弾)

1.2GHzANTの折り返しダーポール(200Ω)に0.5λのUバランを接続すると、スミスチャートは1回転して同じ場所に戻ります。しかしUバランに使用した同軸ケーブルは0.66の短縮率がありますので、Uバランの長さは0.323λになり、長さは7.48cmになります。(144MHzの場合 66.7cm)程度になります。
144MHzUバランの場合スミスチャートは大きく左上に寄せられますが、0.323λに接続された同軸の容量が約30pF程度でチャートの中央へ引き寄せられます。Uバランの整合はインピーダンスの正規化と平衡//不平衡が解消されたマッチングと言えます。
同軸の被覆線はアンテナにつながらない不思議なUバラン

1.2GHzのUバラン

アンテナの製作記事は 1200MHz 20EL (アンテナ製作 第6弾) を参照
接着剤で固めて見難いですが、Uバラン接続です

さて今回は144MHzダイポールアンテナの製作です

ダイポールアンテナの検証で記述したように、給電部のインピーダンスは63Ωです。これをMr.Smthで正規化しましょう。
Nano VNA 活用 (Mr.Smithを使う )
Uバランは0.137λの同軸でリアクタンスはーj(キャパシタンス)領域に移ります。コイルで補正すれば50Ωに正規化が可能。
0.323λ(66.7cm)のUバランは長いので今回は 0.137λ(28cm)のUバランです。オレンジ色のアドミタンスサークル交差点に移行、コンパクトなUバランになりました。同軸と給電部の接合部に200nHのコイルをパラに接続してアドミタンスライン上を50Ωへの正規化を図ります。

 

Cfは同軸の分布容量。30nHのコイルではスミスチャートでは補正がかからない。インダクターを多めに巻いて50Ωに引き戻します。(最終的には200nH )
200nHのコイルは0.8tのエナメル線を D 10mmφを3t、巻き幅は4m程度ですが、加工のばらつきで変化します。
4t程度を疎に巻いてスミスチャートが行き過ぎる(左回転)ようであればコイルの間隔を密にして50Ωに引き戻してください。
Qマッチケーブルが0.323λでも+jでアドミタンスチャートにクロスします。その場合コンデンサーによる正規化をします。

実際のUバランの接続例

       左のエレメントに無線機からの同軸がつながります
無線機につながる中央の同軸の芯線は左のANTエレメントとUバランの芯線につながります、その反対側の芯線は右側のANTエレメントにつながり、すべて同軸の被覆線は一か所で半田付けします

輻射器の長さが972mmと計算されましたが片側のエレメントにUバランの長さが28㎝接続されているせいか?共振点は130MHz付近に近づいてます。恐る恐る両端を5㎜程度ずつ調整しながらカットして940mmで144.2MHzで共振したようです。ダブレットアンテナの給電点は可能な限りギャップを少なくするという鉄則を思い出しました。

これはエレメントの給電点が、流用したTVアンテナケースの構造上数cm程度離れております。Uバラン構成の為、エレメント全長寸法は見かけ短い長さで共振していると推測されます

972㎜より30㎜程度短くしないと144MHzに共振しない様です。(Cut&Tryが発生しました)😢

又反射器と導波器の長さや互いの間隔でも整合ポイントが変化しますのでエレメントの切断は最後の手段としてください。

多素子八木アンテナの場合のSWR調整は導波器と輻射器と反射器の3エレ構成ですることが必須です。

輻射器で145MHzに共振していることを確認して反射器を取り付け スミスチャート上で50Ω中心の右上のインピダンスチャートに乗れば導波器を取り付けると50Ωに引き寄せられていきます(輻射器より短い導波器が接近するために)見かけ上-jに補正されたようです。

エレメントの構成

輻射器の長さが変化すると全体的にエレメントの長さが変化します。エレメントの間隔は既に決定しているのでMMANAで微調整しながら決定しましょう(エレメントの長さはほとんど10mm刻みです)

  1. Ref     (反射器)1030mm     Ref-Rad     間隔  380mm

  2. Rad    (輻射器)  940mm     Rad-Dire1    間隔  260mm

  3. Dire1 (導波器1)880mm   Dire1-Dire2  間隔  340mm

  4. Dire2 (導波器2)840mm   Dire2-Dire3  間隔  380mm

  5. Dire3 (導波器3)830mm   Dire3-Dire4  間隔  410mm

  6. Dire4 (導波器4)820mm   Dire4-Dire5  間隔  460mm

  7. Dire5 (導波器5)820mm 

その他の部材

エレメントとブームホルダーは付いていたものを、補修しながら使用。ブームとスタックホルダーはホームセンターにある、穴あきプレートとUボルトで取り付けです。マストの取り付けも同様に穴あきプレートを利用して組み立て。

最終的にはジャンクの集大成です

 

NanoVNAで実測しましょう

正規化調整前のアンテナ実測のSWRとスミスチャート

fo(中心周波数)144.3MHz Span 30MHz
SWRは1:1.27ですね追加したコイルでスタックにしたときに微調整しましょう

アンテナをスタックにしてSWRを確認

7ELスタック。ん~長いですね 以前制作のHB9CV 5エレと今回の 4エレが同じ長さです

SWRは? 1:1.27のアンテナを2本つけてもQマッチされたSWRも同じく1:1.27でした

アンテナ高が3m程度で周囲の影響からか? 1.2~1.5付近。アンテナの向きで変化します。

NanoVNAで測定は?

SWRは1:1.26付近でSWR計と同じです。 中央付近でループが見られます「いい傾向ですね(*^^)v」

中心周波数が低いほうに移行しています。アンテナの高さを4mまで上げればもう少し変化があると考えます。

微調整はスミスチャートを見ながら、パラ接続の200nHのコイルを密にしたり疎にしたりして調整してください。

設定周波数がアドミタンスチャートの上にあればコイルを(密)増やすと右回転、(疎)減らすと左回転で50Ωの整合点へ移動する。(上の写真だとほんの少しエレメントが長いようですね)

最終調整でのSWRは1:1.1です。145MHzでは 1:1.3 こんなもんでしょう。

以前 亡くなったOMさんから「八木アンテナは小骨の数(エレメント数)より背骨の長さ(ブームの長さ)でGainが決まる!!」という格言を信じましょう。

アンテナの全容

      組み立て中

地面にあると、やっぱり大きい7ELスタック 

 農道占拠中!早く組み上げないと怒られる(# ゚Д゚)

     上がった!!

ブーム間隔は1λです。大きいですね

アンテナを立ち上げるのも一苦労です。筋肉痛~(>_<)

MMANAで組みあがるアンテナの検証

上記のアンテナ構成を0.5λのスタック間隔でGainとSWRの机上の計算

ゴミくずがここまでブラシアップできたのもNanoVNAのおかげです。やるなNanoVNA!!

実戦結果

5ELH×2(1/2λ)のB9CV(Gain11dB)と7EL×2(1λ)のyagi(Gain19dB)で同一場所(片曾根山と会津布引山で)の比較
片曾根山に上がった5EL

 

4mHigh迄上げると5ELのアンテナが可愛く見えます。 ブーム間隔は1/2λ

片曾根山(719m)

以前に高知県室戸町約(730km)5ELのHB9CV×2では1エリアの局から「7が呼んでるよ!!」の助け舟があり、やっととってもらえました。今回7ELは単独交信成立ですやっぱりブームの長さですね。片曾根山と室戸岬の間は中間に南アルプスの甲斐駒ヶ岳と3000mを超える北岳がそびえています。どうやら山岳回析で届いている様です。
FMでは、いつも呼んで頂いている静岡のJA2FGLさんからのリポートは5ELの時は了解度に問題はないが、バックにノイズが軽く聞こえていた。今は59 Noノイズでローカルと聞き間違ってしまうような信号になっているとのリポートでした。「移動地は前回と同じ片曾根山です。-K-]と答えると、「-R- 関東エリアの山かと思っていました」の応答。(*^▽^*)
FMバンドではSWRが1:1.3ぐらいなんですが、電波の飛びに大きな変化は無い様です。

会津布引山(1060m)

北海道松前郡福島町(467km)5ELの時は何度かCallしてとってもらえましたが、7ELは今回は1コールで応答がありました。コンデションもあると思いますが応答率の実感がはっきり見えます。
日本海ダクトのような気がしますが直線では日本海に入り込んでいません。途中は磐梯山と月山それに鳥海山が連なっています。ビームの向きは磐梯山左の月山を向いているようです。500km以内なのでダイレクトかもしれません
風力発電の巨大さには負けますが、7EL×2もしっかり存在感を出しています
7EL×2 ポールの太さは40mmφ太くないと持ちません

いずれにしろ400km以上はダクトによる伝搬なのでコンデションの違いがあると思いますが、比較的近距離(2エリア)からのリポートも良くなっていますのでそれなりの効果はあるものと感じています。

実感はビームの切れが5ELよりはっきりしてきました。山の陰の微弱な局もアンテナを回すととんでもない方向で信号が浮かび上がります。山岳反射の面白さですね。( ^)o(^ )

手作りアンテナでこれだけ楽しめるのはアマチュア無線の醍醐味でしょう